Foto © Mitsumasa Fujitsuka
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道の駅ましこ

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Sede
栃木県益子町, Japan
Anno
2016

風景の建築

栃木県益子町は陶芸に代表される民藝運動で知られている。その南部地域に道の駅を計画するということで、何度もこの地域を訪れた。敷地周囲には延々と田園や畑が広がり、常にその背後には穏やかな低山が取り巻くように連なっていて世界を他から区画している。そもそも地域振興施設でもある道の駅には、外には地域の魅力を明瞭に伝え、内にはそこに住む人々をアイデンティファイするような、ある種の、地域の象徴としての役割がある。そこで考えたことは、ここで目に映る風景、それだけで建築を作れないかということだ。形式(形)も材料(質)も、すべて風景から見いだすことで、その地域らしさを確かめるような建築を求めたのである。

空間を覆う屋根架構と、土地に連なる壁体として建築は整理され、捉えられた。
まず屋根<ルーフスケープ>は周囲に広がる山並み<ランドスケープ>の連なりである。その勾配は地域の山々の稜線に揃えられ、平面的な書割にならないよう、それぞれ異なる位相で起伏する並列する3本の奥行きを持った屋根列とした。その起伏のリズムや肌理感もまた、地域の山並みのそれに倣うことで屋根形は定められ、また、最大スパン32mともなる屋根架構を成立させる材料もまた、八溝杉と呼ばれる地場産材を地元の集成材工場で加工したものを用いている。
一方、壁体以下の下層部は土地に連続する存在である。土間がそのまま立ち上がったかのような台形の壁体は、純粋な地元の土で左官され、その土俵のような豊かな量感によって、益子町が陶器や農産物といった「土からの恵み」で成り立っていることを示し、町の標語でもある「土のおもてなし」を体現している。

山並みのリズムに即して配された木架構や、それを支えながら、一体空間を程よく分節するように離散的に配置された土壁体による内部空間では、大きく小さく移り変わる空間変化や、屋根の位相差によって生まれるハイサイドライトから落ちる自然光の効果もあわせて、付近の山襞を散策するようなシークエンスが生み出され、商品である産物との単純ではない出会いが演出されている。さらに両妻側の大開口部は、その先に広がる田畑や山並みと内部空間を連続させるため、産物や料理として今手に取り味わっているものと、目にしている風景とが直接の関係をもつことにもなる。

こうして作られた建築は、象徴的にも経験的にも土地の風景に連続し、さらにそれを純化し明らかにすることになった。これは陶芸と同じく、人がその土地の風景を解釈し再創造することで生まれる二次的自然の効果なのだろう。
風景でつくり、風景をつくる建築を、求めたのである。

【2020年 日本建築学会賞】

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